【後編】現代における大工の実状に迫る

2020年02月14日

【前編】現代における大工の実状に迫る」では大工の親方と弟子の関係や独立までの道のりを中心に伺ってきました。ここからは現場でのお話を中心に伺っていきます。


望田:(入りたて間もない新人の教育について)最初はどのような業務からスタートするのでしょうか。

望田(父):鉋(かんな)を使って何かする、ということではなく周りの方の世話役ですね。昔はプレカットがなかったので削ったりすることが必要でした、その頃は刃物が使えないと仕事にならなかったという事情もありました。

望田:プレカットが多くなると木を切ることができない大工もいるのではないですか。

補足:下記の引用から市場が縮小する中で単価を抑えるための動きが活発化していったことが分かる。そして、それに伴って大工の世界でも環境変化に対応した形で雇用形態が変化していったことが分かる。

「住宅市場は縮小を続けており、利潤を確保することが優先され、単価を抑えるために消費者ニーズを組み込みながら、技術・技能を持たなくても施工できる住宅へ合理化を進めるとともに、木工事部分を一人親方にアウトソーシングすることで、雇用、育成にかかわるコストを削り、受注の調整弁として経営の安定化を図った。」(一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「大工技能者の育成の検討報告書」(平成27年 住宅市場整備推進等事業)24頁より引用)

一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「大工技能者の育成の検討報告書」(平成27年 住宅市場整備推進等事業)24頁より

望田(父):私は木を切れなければ大工とは呼べないと考えています。

柳沼:工務店によっては大工と呼ばず、現場作業員と呼んでいるところもあります。

望田(父):最近はフルプレカットというものが登場して組み立てだけで完成するので、これまでにも増して木を切る機会が減ってきているでしょう。会社によってはフルプレカットを導入して組み立てるだけとして、大工の技術を要しない建築方法を採っているところもあります

望田:プレカットと特注で建設する場合で具体的に求められることの違いはあるのでしょうか。

望田(父):リフォームや増改築といった仕事になるとプレカット側は関わりが薄くなってきます。これらの仕事はその場で木を刻んでいかなくてはならないので技術が必要となってくるのです。

望田:ここからのテーマは和室です。事前に調べてみたのですが和室の取扱量が減っているとのことでした。家を建てる時に和室はどのような位置づけなのでしょうか。

望田(父):建物が小さくなってきたときに、まず見直すのが和室です。

柳沼:今の和室は本物の和室ではないのです、集成材は使わず、あとは枠を使うくらいでしょうか。今は大壁工法なので昔と造りが大きく変わりましたね。

望田(父):たまに平屋の案件で真壁工法の和室を見かけることはありますね。

望田:和室はもう時代のニーズに合っていないのでしょうか。

柳沼:そもそも和室は何のためにあるのでしょう。現状は洗濯物干し場になってしまってはいないでしょうか。広い家の場合は和室があるでしょうが、そうでなければわざわざ設けなくても...となってしまうのかもしれません。

望田(父):今は外国人が和に関心があったりするので観光地だとか寺社のような古いところであれば多くあるかもしれませんが、それ以外では見かけることも減っているでしょうね。

望田:和室以外のことも含めて昔と違って今だからこそ苦労することは何かありますか。

望田(父):1件あたりの受注単価が下がったことでしょうか。そこにはプレカット化が進み、施工が簡単になってしまったという背景もあります。簡単になったのでその分、数をこなせるようになったという考え方もできますね。

柳沼:仕事内容は昔の方が多かったですが、金額にすると1件あたり20年で40万円くらい下がったという認識です。

望田:昔の大工には技術の質が求められていたのでしょうか。

望田(父):特殊技術が必要だったのでしょう。現場で木を刻むことが必要でしたし、設計図から柱の数ですとか必要な本数を計算することまで大工が設計して実際に組み立てていくことを行っていました。設計書は今より簡易的な内容だったので、そこから柱の強度などを大工が自分で考えて施工していくわけです。今は組み方の設計図を受け取るのでそれに従って組み立てれば完成します。こうなると誰がやっても余程のことがない限り技術力で差がつくということはなくなるでしょう。木を刻むことを必要とするのは寺社ですとか範囲が限られてきますね、個人宅で刻みが必要だという話は最近あまり聞かない気がします。

望田:二人がこれまで取り扱ってきた中で印象的であった和室や階段の納まり、取り扱ったことのある高級材等は何でしょうか。

柳沼:紫檀(シタン)です、すごく光沢がありましたね、刻むのに苦労したのを覚えています。とても丁寧に扱わないと表面がガラスのようになっているので割れてしまったりします。

望田(父):やり直しが効くものは特別緊張することはないですが、銘木のような高額なものを取り扱うとなると慎重になりますよね。

望田:最近は公共機関でも木を使おうとする動きがみられますが、最近使用されている木材の特徴や流行りのようなものはありますか。

柳沼:LVLです、曲がることがないので重宝しています。強度もあるので助かりますね。

LVL:単板(ベニヤ)の繊維方向(木理)を平行にして積層及び接着により製造されている木材加工製品。強度や寸法安定性に優れている合板に対し、繊維並行層の割合が高く軸材や骨組材として用いられるのが「単板積層材」である。これが別の名で「LVL(Laminated Veneer Lumber)」と呼ばれている。 

望田:建築現場の目線で材木店に期待することはありますか。

柳沼:欲しい時に届けてもらえるのが一番ありがたいですね。必要なときに手元にあると助かります。傾向として「ちょっと待ってくれ」と言われることが多いと感じています。

望田(父):材木店も環境が変わってきている中で新しいことに挑戦していくことが求められているのかもしれませんね。例えば、ハウスメーカーと連携して必要な商品を教えてもらい、それに応えて納品していくような方法です。連携を行うことによって幅が広がっていくと思います。ネットワークをどんどん広げていくことが今後大切なのではないでしょうか。

望田:今回はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。


今回の対談では普段あまり耳にする機会のない大工の世界だけではなく、住宅建築の在り方が変わってきたというお話も伺いました。若手の大工が十分に育成されていく環境づくりが必要だということについて考えさせられました。