【前編】ウッドデッキのホントの話

2020年05月14日

近年、家を建てる時に検討に欠かせなくなった「ウッドデッキ」。ある調査では、日本の家屋に定番の「縁側」とほぼ同数の方がウッドデッキを支持するほど市民権を得るようになりました。思い通りのウッドデッキを手に入れ、長く楽しむには?材木卸と施工業者、ウッドデッキを扱うプロのみぞ知るウッドデッキにまつわるホントの話をお伝えします。

(構成・写真 渡邉奈月<ICPコンサルティング>)

株式会社インナチュラル IN NATURAL事業部ガーデンデザイン部 Senior Manager 高島敦(写真右)

大学で都市設計や緑地学を学んだ後、シクラメンの生産を経験。店舗スタッフを経てガーデンデザインの世界へ。一番好きな植物:ウマノスズクサ。好きな庭のタイプ:雑木の庭。


株式会社東集 東京西営業部 部長 萩原 実(写真左)

平成6年に東集に入社。最初に配属された茨城営業所とその後異動した栃木営業所で新規開拓活動を中心に従事。板橋店や本社での営業やお客様センターでの経験を経て東京西支店に配属される。平成28年に同店の店長に着任し、東京都や埼玉県エリアを中心に担当している。日々大切にしていることは「お客様が注文しやすい状況づくり」。


具体的なイメージを持って発注する一般のお客様は少数

萩原:今日は東集のブログにインナチュラルの高島様をお迎えしてデッキについてお伺いしたいと思っています。インナチュラル様と東集では扱っている商材は同じでも、納めるお客様が異なります。東集はウッドデッキを商品として扱う材木屋や工務店に、一方、インナチュラル様は直接ウッドデッキを利用するお客様に納めます。それぞれ異なる視点から、ウッドデッキを掘り下げていきたいと思います。まず、一般のお客様がウッドデッキ工事を依頼する動機をお伺いしたいのですが、何をウッドデッキに求めているのでしょうか?使われ方としては、家族で食事やお茶、バーベキューをするためなどの癒しの空間だったり、単に洗濯物を干すためのスペースだったりなど多種多様です。

高島:実はウッドデッキを具体的にどのように使うかイメージされている方は意外と少ないのです。新築の家を建て、広い庭ができた。その時、お客様が思いつきやすいのは、ウッドデッキ、もしくは、芝を敷く、この二つです。実際には、他にも石を敷いたり、タイルのデッキ、という選択肢もあるのですが。

萩原:なるほど、庭をどうしたいか聞いた時に、具体的な使われ方をいう人は少ないのですね。

高島:少ないですね。ただ、お客様は「どのような庭にしたいか」というイメージは持っているので、プランナーがヒアリングをしながら引き出します。それによって作るものは変わっていきます。庭で何かをしたい。できれば家からはフラットに庭に出て、段差によって空間が分裂するのを避けたい。それを実現するのはウッドデッキ、というイメージの方がすごく多いです。天然石やタイルでもデッキは作れるのですが、イメージしにくいようです。実際、費用もかかるので、ウッドデッキになるケースがダントツに多いのです

萩原:先ほど「まずウッドデッキか芝の話が出る」とおっしゃいましたが、なるべくウッドデッキを勧めることはあるのですか?

高島:基本的にはありません。あくまでヒアリングでお客様のイメージに一番近いものを提案するので、こちらが最初からウッドデッキありきで話を進めることはまずないです。仮にお客様から「ウッドデッキを作りたいです」と言われた場合でも、ヒアリングの中でそのイメージがウッドデッキとは違うと感じれば提案を(ウッドデッキ以外のものに)変えます。

─ 具体的にそれはどのようなケースなのでしょうか?

高島:例えば庭の一部でペットの犬を遊ばせて、同時に自分たちがくつろげるようなウッドデッキも欲しいというお客様がいた場合、庭全体が十分な広さではなくデッキを作った時に犬が遊べるスペースがあまりにも小さくなったり、デッキで家族全員がテーブルとイスを出してくつろげなかったりすることがあります。実際のテーブルやイスの大きさを計算してみて、「ギリギリ置ける」では動線の部分を考えるとダメです。その場合は、デッキをやめて芝生にする、または、ローデッキにする、といった提案をします

─ かなり、お客様の生活に切り込みますね。

高島:切り込みます。お客様は実現性の検討前にイメージで希望をお話いただくケースがほとんどです。言われたことをそのままやると危険なことになりますので、 (お客様を納得させる)高い提案力が求められます。お客様の年齢や家族構成によっても対応が変わってきますし、インナチュラルの商材はウッドデッキだけでなく提案の幅もあります。一番難しいのは植物で、四季によって状態が変わるので、同じ話ができるのは3か月くらいです。新人に一人前の提案力がつくまでには、3年くらいかかるでしょうか。同じ話を繰り返ししていれば良い仕事ではありませんからね。

─ 人材育成について何か工夫されていることはありますか?

高島:極力現場を見てもらうことです。同じ現場は二つとありませんので、できるだけ多くの現場を見てもらうことを大事にしています。

萩原:東集は、お客様の現場や生の声はほぼ分かりません。お客様がウッドデッキを工務店に依頼し、工務店が材木屋に材料を発注し、材木屋が私たちに材料を発注する流れです。工務店や材木屋さんには「こういうウッドデッキがありますよ」という提案はしますが、話はそこで終わってしまう事が多いです。

高くてもよい木材を選ぶ。その理由とは。

高島:これは個人的な意見ですが、マテリアル(材料)からの提案は東集さんだからできると思います。例えば「今こういうものが流行っています。それはこの材料から作っています」といった営業方法です。その材料の存在を知っていても、使い方を知らないので使わない設計者、施工者がたくさんいます。自分たちが知らないものを使うのはリスクが高いので、使い方を教えてもらうとこちらも可能性が広がります。また、ルーツも知りたいですね。この木はどこから持ってきたのか、それはどんな場所か、そういうエピソードがあったほうがお客様にも勧めやすいです。例えば「エコアコールウッドは厳島神社の補修に使われています。日本の木じゃないとダメだから外国産のハードウッドは拒否されました。国に認められたすごい木材です」というような謳い文句があると、お客様も腹落ちがしやすいですからね。

萩原:ちなみにデッキの材料でもいろいろあるのですが、耐久性、施工のしやすさ、温かみ・・・具体的にどのような提案をされているのでしょうか?

高島:当社は(社名が)「インナチュラル」というだけあって、あまり人工木はお勧めしていません。確かに人工木はメンテナンスフリーだから選ばれることもありますが、ここ数年はハードウッドが市民権を得て「ハードウッドはノーメンテナンスですよ」といううたい文句ができました。耐用年数も強いものだと3、40年あり、家の耐用年数とほぼ同じです。そもそも「人工木と天然木とどちらが好みですか?」と聞くと、皆さん天然木と答えますから、ネックであるメンテナンスの必要がなくなれば天然木がおすすめですよという流れになる。ましてや、当社に来るお客様は自然志向の方が多いのでなおさらです。天然木の問題としては色が落ちることと樹液が出てくることですが、それは天然であるが故のことなので、逆にそれを楽しんでほしいと伝えています

萩原:樹液についてはウリン材のようにものすごく出るものがあります。以前それをベランダに使用したら、完成1か月後にウリン材の赤い樹液が白い壁に流れだして「何だ、これは?」とトラブルになったのを聞いたことがあります。ウリン材の樹液はどこまで出れば止まるのかが分からないのですが、やはり1年や2年では止まらないでしょうね?

高島:だいたい1年もあれば収まると思いますが、環境によって数ヶ月で収まったり何年も出続けたりすることもあります。いずれにせよ明確に収まる時期が答えられないので、我々は(ウリン材を使用する際は)事前に樹液が出ることをご説明した上で施行しています。

萩原:ハードウッドでも樹液や灰汁が出にくい材料はあるのでしょうか?

高島:イメージとして出やすい材料、出にくい材料はあるのですが、全く出ない材料はないのでどれを使っても同じかと思っています。

萩原:材料を提案する際は、「予算」も大きな制約条件です。実際にお客様と打ち合わせする時にハードウッドを使いたいけど予算より高かった場合に他の材料を使うことはありますでしょうか?

高島:そういったケースはゼロではないです。確かにウリンやイペに比べてバツやイタウバは多少安いですが、「多少」なので大して金額は変わりません。それよりも耐用年数は倍くらい(ウリン、イペの方が)長い。値段の差と耐用年数の差で考えたときにどちらを選びますか、となると結局値段が高い方を選びます。基本的に最終判断はお客様にゆだねますが、比較対照するものはいくつか提示すると、結果はほぼ同じになりますね。

萩原:その点が東集とは違いますね。材木屋や工務店さんを相手にしていると、最初からデッキに使う予算というのが決まっていて、それに合うような材料の発注が来ます。

高島:そこは立ち位置によって変わってくる点ですね。もっとも気をつけていることは、まず「安全」。

萩原:一般のお客様と直接やり取りする点で、気をつけている点はありますか?

高島:「デザイン優先にはしない」ことを心がけています。デザインはもちろん大切ですが、それより建築物の強度や使い勝手の良さを優先しています。いくら素敵なデザインでも、その通りに作ったために強度が弱く事故が起きたり、お客様がケガをしたりすることは絶対にあってはならない。それは自分だけでなく、ほかのスタッフにも強く言っています。とにかくまずは安全。たとえお客様が「こういうデザインにしたい」と指定されても、「それは強度的に不安があるので、当社ではできません」と答えます。使い勝手についても、そこに住まわれる方に、家族構成や具体的にどのように使うかなどをヒアリングで引き出した上で、それを基にデザインします。例えばヒアリングでお客様に友人が多くて週末は良くバーベキューすると分かれば、デッキの形を変えて普段は階段だけどベンチにも使えるようなデザインを提案します。

萩原:ラティスやフェンスをつけることもありますか?

高島:デッキには基本的につけませんが、小さなお子様がいらっしゃる場合にはその二つを付けるか、あるいはデッキ自体を低くするように提案します。その場所を使う方の姿が見えるまでヒアリングすることが重要です。提案する幅も狭くなって、何を提案することが正しいのか分かりづらくなりますから。

萩原:東集のお客様はデザインのプロで、発注が来る段階では既に形が決まった図面あるので、それを基に木拾いすることはありますが、こちらから「この図面ダメじゃないですか?」とは言えません。

高島:東集さんでも「デザイン部」とかあっても良いじゃないですか? 「デッキ作る場所の図面をくれればデザインします」みたいな。木拾いから見積もりまで全部するという部署があっても面白い。忙しい(住宅)デザイナーは助かると思いますよ。

萩原:それは仕事の幅が広がりいいですね。将来的には考えたいです。

次回、後編に続きます。